鬼呼びの花嫁
「早く家に入れよ。じゃねぇとまた襲われるぞ」
桜木くんが怖い目でわたしを睨んだ。
わたしが門の中に入ったのを見届けると、桜木くんは暗い夜道をスタスタと歩き出した。
「待って!桜木くん」
「なんだよ」
「どこに行くの?」
「おまえには関係がないだろ」
背中を向けたままの拒絶。
わたしはただ去っていく桜木くんの背中を見送った。
どうして桜木くんはあんなにわたしに冷たいんだろう?
「知りたいかい?」
「!!」
いきなり声が聞こえて振り返ると家の戸口に藤先輩が立っていた。
「おかえり、遅かったね」
「藤?先輩?」
「もうご飯の準備ができてるよ。中に入って」
「どうしてわたしの家に?」
藤先輩は小さく笑ってわたしを見た。その瞳が紫に輝いた。
「あれ?榊先生から聞いてなかった?僕たちは人の記憶も操作できるんだよ」