鬼呼びの花嫁
わたしを取り合いになる。
ただ力を得る鬼のために…そんな。
だったら、こんな力なんていらない。
欲しい人にあげる。
「こんな指輪なんて……」
「何をするんです!?つばきさん、やめなさい!」
おばあ様からもらった大切な指輪だけど、そんな力なんていらない。
喰われそうになったり、鬼の花嫁に無理やりされる運命なんて。
「…やめなさい、指が千切れてしまう!」
「こんな、もの、…いらない」
わたしの気持ちを無視してく。
そんな力なんていらない。
「ビキッ」
外れないのに、関節だけが音を立てた。
「つばきさんの指が―――」
榊先生がわたしが無理に外そうとした腕を止めようとした時、制服の内ポケットに入れたはずのもう片方の指輪が胸から滑り落ちた。
榊先生の指に指輪がぶつかると、碧色の光が散った。
光りながら榊先生の左手の小指に収まった。