鬼呼びの花嫁





榊先生がわたしに右手を差し出した。


「つばきさん、わたしの手に触れてみてください」

人間と同じ手。
差し出した指先に触れると温かかった。


「わたしが怖いですか?」

怖くない。
少なくとも榊先生の手は。
首を横に振ると、


「……よかったです。つばきさんがわたしに触れて倒れたので怖がられてしまったと思いました」

そう言って榊先生が小さく笑った。


榊先生の心配してくれた体はなんともない。力も入ってる。


「そうですか良かったです、わたしは帰りますね」

「榊先生」

立ち上がった先生を思わず呼び止めた。


「榊先生はわたしの力に呼ばれて嫌じゃないですか?」

榊先生がゆっくりと振り向いた。

わたしの力が無理矢理に榊先生を呼んでるから……
だから。


「……つばきさんは一目惚れを信じますか?」

「え?」



「わたしはつばきさんに一目惚れでしたから」


衝撃の告白だった。



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