鬼呼びの花嫁




「倒れた?」

「力が抜けて……」


すっ、桜木くんの目が細くなる。

「……だから呼んだのか」

「?」


誰も呼んでない。
もう誰も呼ぶことなんてない。
何があっても呼んだりしないもの。

呼んでない証拠に誰もこなかった。


それなのに顔をしかめたのは桜木くん。


「……帰る」

「?」

「……二度と俺を呼ぶな」


わからない。
本当に呼んでないのに―――

冷たい瞳だった。
何もかも拒絶する瞳。


「……気をつけろ」

「え、ここ二階っ!」


ベランダに立ってた不機嫌な桜木くんは謎の言葉だけ残して下に飛び降りた。

窓から身を乗り出すと隣のお屋敷の門が開かれ、真っ黒な人が桜木くんを出迎えてた。

去ってく桜木くんは振り向きもしないまま姿を消した。



『呼ぶな』って言ってた。

わたし呼んでないのに―――



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