鬼呼びの花嫁




「なんで人間がこの学校に転校してこれたのか知らねえけど、こいつらに喰われねえように気をつけな」


ざわざわ
周りがざわめいた。


「なんだ?あんた―――何も知らねえのか?」


桜木くんはわたしの顔をマジマジと覗き込んだ。


「ここはな、鬼の里なんだよ」

「え?鬼の…里?」

「人間が入っていい場所じゃねえんだよ。入ったら最後どうなるのかぐらいわかるだろ」


桜木くんの顔が近くなって、その瞳が黒から黄金色に変わる。


「……鬼?」

「そうだ。鬼の里だ。人間がいる場所じゃねえ。そんな場所にいるんだ。喰われても文句言えねえんだよ」


―――鬼?

息を飲むと、目の前の金色の瞳がすっと細くなった。


「もう少し肉がついてりゃ旨そうなのに」


金色の目に捕らわれて動けない。
頭がついていかない。



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