純情女子と不良DK


 ファミレス内に入り席へと案内され、さっそく教科書やノートを広げる優聖に結構やる気じゅうぶんなんだなと感心した。
そりゃ補習がかかってれば意地でもやる気になるのだろう。


「日高さん、飲み物は?」

「あ、ドリンクバーか。行ってくれるの?えっと…じゃあメロンソーダ―!」

「ガキみてぇ」

「……じゃあアイスコーヒー」


 自分の分まで取りに行ってくれるのはありがたいが一言余計な台詞が入る。
高校生にガキと言われるなんて、成人済みの葉月にはなんともムッとくるものである。コーヒーなんて飲めないのに意地を張ってしまい後になって後悔した。
メロンソーダ―からアイスコーヒーの訂正に何を言うでもなく、そのままスタスタとドリンクバーの場所へ行ってしまった優聖に、これはアイスコーヒー飲まなきゃいけないやつだ…と肩を落とした。



「はいメロンソーダ―」

「……え?」

「やっぱアイスコーヒーにします?」



 戻って来た優聖は、アイスコーヒーではなく最初に言ったメロンソーダ―を持ってきた。
何も言わなかったから、てっきりアイスコーヒーを持ってくるのかと思っていたので少し驚いていると「やっぱ変えてきます」と再び背を向ける優聖。葉月慌てて「大丈夫大丈夫」と言って引き止めた。
あ、そう。みたいな表情でそのまま席へつき自分の飲み物、ミルクティーを口に含む。
…なんというか、うん。クールだよね。ドライだ。そんなことを思う。
 けど実際、こうやって自分と葉月の分まで取りに行ってくれたのだ。
優しい子だっていうのは、とっくに知っている。


「いやぁ、ツンデレ…というやつですかねぇ」

「誰が、俺が?」


 は?というような表情の優聖に葉月はヘラッと笑う。
そんな葉月に優聖は納得いかないといった様子。
そこで葉月はハッとしてあることに気が付いた。



「あ!てか、制服だ…!」

「えぇ~、今更ですか」



 確かに物凄く今更だ。
普通、会ってすぐに言う言葉なのに。
ドッグランドではいつも私服だし、前回の勉強会の時だってもちろん私服だった。
そして今日は学校終わりなので当たり前のごとく、制服。

初めて見る優聖の制服姿に思わずまじまじと見つめてしまっていた。自分の母校の制服だ。懐かしい。
どこか目を輝かせてじっと見てくる葉月に居心地悪そうに眉を寄せる優聖。その様子に気が付き、慌てて謝った。



「今まで私服姿しか見てこなかったから!こうして見るとやっぱり高校生なんだなぁ…若いなぁ~…」

「ババアかよ」

「お姉さんと呼びなさい」

「はいはいお姉さん」



発言は確かにおばさんっぽかったかもしれないけどまだまだ成人なりたて。優聖達には負けるけど、こっちだって一応若い部類に入るんんだから。



「…そうだ。さっき反省文書かされたとか言ってたけど何かしたの?」

「遅刻しすぎて」

「あー…遅刻したらポイントつくやつなんだよねぇ」



南扇は、一回の遅刻に1ポイントがつく。それが10ポイント溜まれば遅刻指導、担任から呼び出され反省文を書かされる。そして20ポイントでなんと校長指導が入る。
葉月は遅刻は全くしたことがなかったので、そんなものとは無縁だったけれど…。


「気をつけないと、進路に響くよ?」

「んなまだ先の話されたってねー」

「そうだけどさ。ていうかまだ入学して1か月ちょいで既に遅刻ポイント10ってどういうことなの…」

「朝は弱いんですよ、俺。ほんと起きれねぇ」

「お母さんに起こしてもらうとか…」

「いや、母さんも朝弱いから。父さんは朝はやくから仕事だし。だから弁当とか前日の夜につくってんすよ」



お弁当はちゃんと用意してもらってるのはいいことだ。
……けど、親子揃って朝が弱いときた。もう目覚まし時計5個くらい買った方がいいのでは…とさえ思う。






















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