願う場所、望む奇跡
☆Secret.1
*光射す世界
日差しが強く、毎日の様に30度を超える夏の日、母親は珍しい格好をしていた。
「お母さん、何でそんな格好をしているの?」
全身黒ずくめで、見ているだけでも暑い格好をしていたので聞いてみた。
「夏希、今日休みよね?あなたも来なさい」
「どこへ行くの?」
母親は、鞄の中から数珠を出して確認するように頷いた。
「お父さんが、あなたのお父さんが亡くなったの」
「えっ……?」
母親の今にも泣きそうな表情と言葉で、ようやくどこへ行くのか分かった。
今から、父親の葬儀に出かけるのだ。
私は、それ以上何も言わず、着替えて準備をした。
私には、父親がいない。
正確には、13年前に両親が離婚していて、私は母親と一緒にいる。
その間、母親は再婚をしていない。
話しはあるのに、拒んでいるのだ。
聞けば、父も1人でいたらしい。
ただ、13年間1度も逢ったことはなかった。
離ればなれになった弟とも逢ったことはない。
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