願う場所、望む奇跡
「他のヤツのこと考えていたでしょ。俺以外の男のこと考えるの禁止。それが、たとえ夏希の好きなヤツでも」
唇を離して、そっと囁かれた。
そして、また唇を重ねた。
こうやって初めて知ったこと。
意外に松本くんは嫉妬深い。
義哉のことはもちろん、それ以外の男についてもダメ。
仕事は割り切っているけど、本当は嫌らしい。
いろんな感情を、初めて知っていく。
それが、苦しいような嬉しいような。
でも、たまに申し訳なく思う。
松本くんは、ストレートに想いをぶつけてくる。
だけど、私はそれを全部は返せない。
彼もそれは分かっていた。
ゆっくりでいいからと、彼の言葉に甘えていた。
「じゃあ、また明日」
「うん、おやすみなさい」
別れた瞬間に思う。
本当にこれでいいのかって。
私は時が経てば松本くんを好きになれると思っていた。
義哉を忘れられると思っていた。
だけど、それは間違っていたんじゃないかって思うようになった。