願う場所、望む奇跡
*もどかしい想い-義哉side-
最初は、そんなつもりはなかった。
母さんに言われて、このままじゃダメだと思った。
夏希を傷つけたい訳じゃない。
だから、2人で出かけてとりあえずはもとに戻ろうと。
話せないのもキツイから。
だけど、やっぱり思い通りにはいかない。
電話に出ろと言ったのがいけなかったのか。
俺は、莉亜さんだと思っていた。
だから、躊躇うことなく出ればいいと思った。
なのに、聞こえてきたのは男の声。
そして、“松本くん”という名前。
極めつけは、楽しそうな夏希の声。
結局、止まらなかった。
もう、我慢の限界だった。
毎回見せつけるようについているキスマーク。
それを見るたび、かきむしりたかった。
俺が、上書きしてやりたかった。
俺が、めちゃくちゃにしたかった。
夏希の初めてが、欲しかった。