願う場所、望む奇跡
「夏希ちゃん、だっけ?可愛いねぇ」
耳元で囁くその言葉に、俺は驚いて川島遥を見る。
そいつの表情は、ニヤリと口角が上がってはすぐに普通の笑みに戻る。
ヤバイな。
1番やっかいな人物に夏希の存在を知られた。
どこまで知っているのか分からないけど、ろくなことを考えていない笑みだ。
とりあえず、話しを聞くしかないようだな。
俺は何も言わず立ち上がり、教室を出た。
「さすが義哉くん」
そう言って、俺のあとをついてくる。
それから、空いている教室へ入る。
たぶん、話しているうちに休憩時間も終わるな。
昼とかじゃなく授業の合間の10分休憩に話しなんて思ってくるから。
まぁ、一つ授業を受けなかったからって、特に問題はないけど。
空き教室に入り、そこらへんの机に腰掛ける。
離れて座ればいいのに、隣の椅子に女は座る。
この距離でさえ嫌なのに、この女は自分の企みで頭がいっぱいらしい。
俺は、黙ったままで女が話し出すのを待った。