願う場所、望む奇跡
その日以降、毎日が淡々と過ぎて行った。
ただ機械のように、仕事をこなしていたと思う。
1日何をしたか覚えていないことも多々あったから。
「夏希っ」
「……えっ?」
気づけば、もう少しで電柱にぶつかるところだった。
「あ、ごめん。ありがとう」
私の腕を掴んで止めた、松本くんにお礼を言った。
そういえば、今日は休日で、松本くんとデート中だったんだ。
「大丈夫か?最近、ボーっとしすぎじゃない?」
「んー、大丈夫だよ」
やっぱり、ボーっとしていることはバレている。
だけど、その理由を言える訳がない。
松本くんは私の気持ちを知っている上、今は彼氏なんだ。
今回のことで思ったことは、私はまだ義哉が好きなんだってこと。
そのことだけを痛感した。
だからと言って、別れられる訳がない。
元々、それを承知の上で付き合っているのだから。