願う場所、望む奇跡



* * * * *



部屋を出た2人は、空いている会議室へ入る。

定時を過ぎているため、周りを気にしながら。



「こんなところに連れて来て、仕事の話しじゃないですよね?」



適当に椅子に座った莉亜から話しかける。



「もちろん、違うよ」


「じゃあ、夏希先輩のことですか?」



首を振る宏樹に、すかさず言う。

仕事以外で話すことはこれしかないと思っていたから。



「……林さんは、最近の夏希の状況を聞いている?」


「状況って、仕事でミス増加の理由ですか?」


「そう。仕事中だけじゃなく、デート中も心ここに在らずで……」


「それは、松本さんのせいじゃないんですか?」



悲しそうに言う宏樹に、莉亜は追い打ちをかけるように言う。



「林さんも言うね……」



莉亜の言葉には、苦笑いするしかなかった。




< 144 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop