願う場所、望む奇跡
* * * * *
部屋を出た2人は、空いている会議室へ入る。
定時を過ぎているため、周りを気にしながら。
「こんなところに連れて来て、仕事の話しじゃないですよね?」
適当に椅子に座った莉亜から話しかける。
「もちろん、違うよ」
「じゃあ、夏希先輩のことですか?」
首を振る宏樹に、すかさず言う。
仕事以外で話すことはこれしかないと思っていたから。
「……林さんは、最近の夏希の状況を聞いている?」
「状況って、仕事でミス増加の理由ですか?」
「そう。仕事中だけじゃなく、デート中も心ここに在らずで……」
「それは、松本さんのせいじゃないんですか?」
悲しそうに言う宏樹に、莉亜は追い打ちをかけるように言う。
「林さんも言うね……」
莉亜の言葉には、苦笑いするしかなかった。