願う場所、望む奇跡
「まぁ、冗談はさておき。あたしは理由、知らないですよ」
しれっと答える莉亜に、宏樹は落胆する。
莉亜が1番分かっていると思ったから。
「じゃあ、噂で聞いたけど、弟くんに彼女が出来たって本当?」
「……それは、本当ですけど……。何でそれを気にするんですか?」
逆に聞かれて、宏樹は言葉に詰まる。
いくら莉亜でも、夏希の気持ちを知っているのだろうかと。
姉弟での恋だから、むやみに人に言えることではないし。
「まぁ、いいです。ただ、本気の付き合いじゃないですよ」
「どういうこと?」
「あたしの弟から聞いたんですけど、ある弱みを握られて仕方なく付き合っていると。なので、義哉くんは本気じゃないみたいです」
「弱み?」
「あたしは、その弱みの中身は知らないです。
あたしの弟は知っているみたいですけど、教えてもらえなかったです」
宏樹は、ほとんど義哉と逢ったことはない。
1回だけで、凄く睨まれたことだけ。