願う場所、望む奇跡
気の強そうなヤツだと思った。
そんなヤツが弱みなど握られるのだろうか。
そうとうなものだと思う。
「ありがとう。とりあえず、分かった」
「え?分かったんですか?」
莉亜は、あまり意味が分かっていなくて首を傾げる。
「林さんに聞くことは聞いたから」
「あ、松本さんっ」
言うだけ言って去って行こうとする宏樹を、莉亜は引き止めた。
「何?」
「えっと……」
言いにくそうにしている莉亜の言葉をじっと待つ。
そのうち、強い意志を持った瞳で宏樹を見た。
「夏希先輩の幸せを考えて下さいね」
それだけ言って、莉亜は戻って行った。
これだけ聞くと、莉亜は全てを知っているんじゃないだろうかと思う。
「幸せを考えて下さい……か」
グッと手を握り締め、前を見据えて歩き出した。