願う場所、望む奇跡
「あーオレ、必死に笑うのこらえていたんだけど」
そう言いながら、顔は笑っている。
何かあった時のため、他の人が近寄らないために、悠弥は廊下にいた。
話しは、全部聞いていたのだ。
「あんな女を好きになるヤツがいるのかなー」
「どっかに物好きがいるかもよ。俺は嫌だけど」
「オレも嫌だ。
でも、あの調子じゃあ、まだまだ義哉を追いかけ回すね」
その言葉を否定出来なくてうんざりする。
狙うと宣言しているんだし、その辺は気を付けないと。
「でもまぁ、そんなことより夏希さん。ここまでしてもらったんだから、あとは義哉が決めるだけ」
悠弥の言葉に、ゆっくり頷く。
受け入れてもらえるとは思っていない。
それでも、松本宏樹にあそこまでされて黙っている訳にはいかない。
いずれは言うつもりだった。
それが、少し早くなっただけ。
今度は、誰かに奪われる前に、正直に伝えるんだ。
2度と姉弟に戻れなくても。
俺が好きなのは変わらないから。