願う場所、望む奇跡
今の状況、苦しいのは私だけじゃなかったんだ。
むしろ、隣にいるのに他の男を見る私を見ている松本くんの方が苦しかったんだ。
「ご、ごめんなさい……」
「イヤ、謝る必要はないよ。さっきも言ったけど、無理強いしたのは俺だから」
「それでも、私が受け入れたから……」
「受け入れざるを得ない状況を作ったからね。誰でも嫌だとは言えないよ」
苦笑いをしながら言う。
松本くんは、あくまで自分が悪いと言う。
そんな訳がないのに。
受け入れた時点で、私も同罪だ。
「夏希、別れよう。やっぱり、好きな人と一緒にいるべきだよ」
「でも……」
一緒にいれればいいけど、相手は弟なんだ。
それに、彼女がいる。
私が傍にいてはいけない。
「俺と一緒にいても、夏希は好きにならない。今ならそう、断言出来る」