願う場所、望む奇跡
*距離が甘酸っぱい
諦めていた恋を手に入れた時には、さわやかな風が吹く秋の季節になっていた。
両思いだってことが分かって付き合いだした私たちだけど、あまり変わったことはない。
以前より話すことは増えたけど、お母さんがいる手前、それは姉弟の範囲だ。
それを見て、「仲直りしたの?」とお母さんは言うだけで、怪しむことはなかった。
私は、どういう態度をとればいいのか悩んだのだけど、義哉は何もなかったかのように過ごしていた。
分かっていたことだ。
そもそも姉弟なのだから、公にはイチャイチャすることは出来ない。
家ではお母さん、外でも人の目がある。
一緒に歩くことは出来ても、手を繋ぐことすら出来ない。
その上、高校3年生である義哉は受験生なのだ。
甘い日々が来ることは、ほとんどないということだ。
それを寂しいとは思うけど、自分が選んだのだ。
義哉の手を取った時に、覚悟していたことだから。
「そっか。無事に付き合うことになったんだ」
忙しい一週間が過ぎて落ち着いた頃、松本くんに義哉とのことを話した。
黙っていることも出来たけど、背中を押してくれた彼には全て話すことにした。