願う場所、望む奇跡
弟と付き合うことになったのに、特に驚きもしなかった。
「それなのに、何でそんなに沈んだ表情をしているの?」
「え?」
私は、普通のつもりだった。
イヤ、つもりとかじゃなくて普通にしている。
沈んでいるつもりもない。
「ずっと見ていたんだから、表情の変化は分かる。それに、夏希は分かりやすい」
別れたあとも、以前と変わらず夏希と呼ぶ。
それを、とやかく言うことはしない。
態度も変わらないし、私にとっては助かっている。
変わったことと言えば、一緒に帰らなくなったことぐらい。
会社を出るまでは一緒になることはあるけど、出てからは別々。
そのためか、別れたと噂されることはなかった。
「そんなに分かりやすいかなぁ?」
「分かりやすいと思うよ。それで、どうしたの?」
以前と変わらず優しくされると、つい話してしまうんだ。