願う場所、望む奇跡



「んー、付き合うことになっても、以前と変わらないっていうか……。
イヤ、堂々と出来る立場じゃないって分かっているんだけど……」


「夏希は、イチャイチャしたいと」


「えっ?あ、そういう訳では……」


「そういう訳でしょ。以前と同じじゃ物足りない。普通は、そう思うよ」



そこまで話して、ふと思った。

別れた相手に、何を話しているんだと。

松本くんの気持ちはよく分からないけど、普通こんな話しは聞きたくないでしょ。



「ごめん。なんか無神経すぎたね」



私たちの関係を思い出して、すぐに謝る。

だけど、松本くんは苦笑いしながら首を横に振る。



「俺が聞いたことだし、夏希が気にすることじゃないよ」



それでも、何でもないと言えば良かったんだ。

納得するかは別として、言い張れば良かった。



「夏希たちの場合特殊だし、人前で堂々と出来ないからモヤモヤすることもあるかもしれない。
それでも、彼を選んだんだから。簡単に手放すようなことはしないこと」




< 188 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop