願う場所、望む奇跡
「出歩いていないなぁー。姉弟なんだから、少しは出歩くと思ったのにぃ」
学校では見せないような表情をしながら、舌打ちをする。
「やっぱり、家を探るべきかなぁ。でも義哉くん、勘がいいからなぁ。つけれないんだよなぁ」
腕を組みながら、うーんと考える。
「卒業までに目を覚まさせないと。
手を繋ぐだけじゃ弱いから、やっぱりキスだよね。脅す材料としては」
楽しそうに、思ったことを口にする。
「誰にも渡さない。義哉くんは、あたしのモノだから……」
ニヤリと笑って、川島遥は人混みの中を歩き出す。
義哉に削除されてもなお、諦めずにまだ狙っていた。
義哉と夏希が付き合ったのを知る由もないけど、休日には義哉を探しに街へ出ていた。
それを義哉は気づいているため、簡単にはボロを出さない。
今はもう、夏希を手に入れているのだから、我を忘れて外でなんてありえない。
そんなことを知らない遥は、義哉は手に入るモノだと思って、日々無駄な努力をしていた。