願う場所、望む奇跡



「え?」


「今すぐ抱きしめたくなるから」



心なしか、少し顔が赤くなっている。

もちろん、言われた私も赤くなっているけど。

義哉でも、こういう表情するんだ。

新しい発見があって、ちょっと得した気分になった。



「とりあえず、行こうか。ここに長居すると目立つ」


「そうだね。知り合いに逢ったらヤバイし」



移動した先の駅のホームでも、目立たないように壁際に立っていた。

その前を、カップルが腕を組み仲良さそうに通る。

つい、それを見入ってしまった。

ああいうのを見ると、羨ましく思う。

周りを気にせず堂々と出来て。


後悔している訳じゃないけど、何で姉弟なんだろうと思ってしまう。

血の繋がりも何もなかったら、義哉と堂々としていられたのに。

だからと言って、義哉以外を選ぶなんてことは、もう出来ない。

私の心は、義哉で埋め尽くされているのだから。


そんなことを思っていると、何も言わず自然と手を繋がれた。




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