願う場所、望む奇跡
「ちょっと、まだ出ていないよ?」
義哉の行動に、慌てて手を放そうとするけど、がっしり掴まれている。
「大丈夫。コレは、夏希が迷子にならないためだし」
いたずらっ子のように、そんなことを言われる。
あまり人もいないこの駅で、迷子なんてありえない。
だけど、1度繋いでしまったものは放したくなかった。
理由はなんにせよ、嬉しいんだ。
「あっ、こっち」
急に何かに気づいた義哉は、繋いだ手を引っ張り物陰に隠れる。
「え?何?」
「静かに」
そう言われて、息を潜める。
何があったのか、私は全然分かっていない。
「……去ったみたいだな」
ほっと一息つくように言う。
私も少しだけ顔を出すけど、誰もいないから何が起きたのか分からない。