願う場所、望む奇跡
「今まで男の人を呼び捨てにすることなくて。松本くんも名字でずっと呼んでいたし……。なんだか恥ずかしくて」
「名前を呼ぶのに、恥ずかしいとかあるんだ」
思っていることを素直に吐き出すと、物珍しそうに言った。
それに対して、少しだけムッとした。
「あ、バカにしている訳じゃないから。
俺は、夏希って呼びたくて仕方ない。それに、夏希には呼んでもらいたい」
懇願されるように言われたら、それに従うしかないじゃない。
「慣れるように頑張ります……」
そう返すと、嬉しそうに笑った。
「すぐにって訳にはいかないけど、早めに母さんに話そう」
「うん……」
どう思われるのかは凄く不安だけど、話さない訳にはいかないから、ちゃんと覚悟を決めよう。
そう思っている私の腰に、義哉の手が回される。
「え?ちょっと……」
そのまま背中を撫でられる。