願う場所、望む奇跡



「今まで男の人を呼び捨てにすることなくて。松本くんも名字でずっと呼んでいたし……。なんだか恥ずかしくて」


「名前を呼ぶのに、恥ずかしいとかあるんだ」



思っていることを素直に吐き出すと、物珍しそうに言った。

それに対して、少しだけムッとした。



「あ、バカにしている訳じゃないから。
俺は、夏希って呼びたくて仕方ない。それに、夏希には呼んでもらいたい」



懇願されるように言われたら、それに従うしかないじゃない。



「慣れるように頑張ります……」



そう返すと、嬉しそうに笑った。



「すぐにって訳にはいかないけど、早めに母さんに話そう」


「うん……」



どう思われるのかは凄く不安だけど、話さない訳にはいかないから、ちゃんと覚悟を決めよう。

そう思っている私の腰に、義哉の手が回される。



「え?ちょっと……」



そのまま背中を撫でられる。




< 220 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop