願う場所、望む奇跡
*常識はいらない
初めての旅行は、終始楽しかった。
堂々と出歩けたし、ちゃんと恋人っぽいことも出来た。
さすがに、朝は体がきつかったけど。
帰りも駅で別れた。
義哉はそのまま悠弥くんに逢いに行った。
私はそんな元気もなく、真っ直ぐに家に帰った。
「あ、お帰りー」
帰ったとたん、そんな声がして驚いた。
「お母さん……いたんだ」
「何よー。いちゃ悪い?
今日は休みだからいるわよ」
唇を尖らせて、不満そうに言う。
それもそうだ、休日なんだからいても不思議はない。
だけど、少しだけいないで欲しかった気もする。
こうやって向かい合うと、少しだけドキドキする。
後ろめたいとかじゃないけど、心の準備が出来ていなかった。
「どうだった?良かった?」
「え?何が?」