願う場所、望む奇跡
「何がって、温泉に決まっているでしょ」
「あっ、うん。良かったよ。旅館も広かったし」
不自然に慌ててしまった。
当たり障りのないとこで答えないと、余計なことを話してしまいそうになる。
私は、秘密ごとは向いていないのかもしれない。
「私も、温泉とかでゆっくりしたいなぁ」
「お母さん、最近忙しいもんね」
「1度やり出すと、遠慮ないよ。今月ちょっと、出張続くし」
「え?また、出張?」
「そう。場所は変わるけど、続けてだから帰らずそのままだね」
「えー、大変だね……」
私は、営業じゃないから出張はない。
仕事中に外出することもない。
だから正直、お母さんがどのくらい大変なのかは分からない。
それでも、お母さんの表情を見れば疲れているのは分かる。
「仕事するのはいいけど、体壊さないでね」
「それは、気を付けるよ。
さて、ご飯作るか」