願う場所、望む奇跡
「あ、私が作るよ」
こんな疲れている中、家のことまで全てやってもらったら本当に体を壊しそう。
私だって、社会人なのに未だに家にいて甘えてしまっているんだから、出来るだけ手伝おう。
ただでさえ、親不孝なことをしているんだから。
これで、全て許してもらえる訳じゃないけど。
それでも、何もやらないよりはましな気がするから。
「ただいまー。って、あれ?今日は、姉さんが作っているの?」
帰って来た義哉が、キッチンにいる私を見て不思議そうに言う。
「私の体を労わってくれてねー。助かるわぁ」
テレビを見ながらくつろぐお母さんが、私の代わりに答える。
私は、そんな会話を聞きながら食事を作る。
だけど、気にしていなかったのはまずかったかもしれない。
急に、私のお腹に手が回る。
思わず悲鳴を上げそうになったのを、寸でのところで止まった。
後ろから、口を塞がれたから。
「後ろめたくなった?」
耳元で、コソッと囁かれた。