願う場所、望む奇跡
「こんなことでドキドキしていたら、この先もたないよ?」
そう言ったかと思えば、隙ありとばかりに耳を舐められた。
「ちょっとっ!」
文句を言おうとしたけど、にっこり笑って人差し指で唇を押さえられてしまう。
「あまり大きな声出すとバレるよ?」
妖艶に笑う義哉に、何も言えなくなる。
お母さんにバレないかひやひやしている私とは違い、凄く余裕そうに見える。
それが悔しくも思うけど、ひやひやしてしまうのは仕方ない。
お母さんがいる前でも、堂々と手を出してくるんだから。
これは、今回に限ったことじゃない。
今までもあった。
でも、温泉に行って一線を越えてからは、それ以上にベタベタしている気がする。
そのたびに、私は1人でハラハラするんだ。
バレそうなことをしなければいいのに、私はそれを突き放せない。
結局は、一緒に溺れてしまうんだ。
「そうそう、言うの忘れていた」
ある日の夕食時、お母さんが急に話しを変えるように口を開いた。