願う場所、望む奇跡



「こんなことでドキドキしていたら、この先もたないよ?」



そう言ったかと思えば、隙ありとばかりに耳を舐められた。



「ちょっとっ!」



文句を言おうとしたけど、にっこり笑って人差し指で唇を押さえられてしまう。



「あまり大きな声出すとバレるよ?」



妖艶に笑う義哉に、何も言えなくなる。

お母さんにバレないかひやひやしている私とは違い、凄く余裕そうに見える。

それが悔しくも思うけど、ひやひやしてしまうのは仕方ない。

お母さんがいる前でも、堂々と手を出してくるんだから。

これは、今回に限ったことじゃない。

今までもあった。

でも、温泉に行って一線を越えてからは、それ以上にベタベタしている気がする。

そのたびに、私は1人でハラハラするんだ。

バレそうなことをしなければいいのに、私はそれを突き放せない。

結局は、一緒に溺れてしまうんだ。



「そうそう、言うの忘れていた」



ある日の夕食時、お母さんが急に話しを変えるように口を開いた。




< 227 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop