願う場所、望む奇跡



「んっ……」



思わず声が漏れてしまう。



「ほら、まだ濡れている。触っていなかったのに」


「やっ、やだぁ……」



動く手を止めようと手を握るけど、それでも義哉の手は動き続ける。



「ちゃんと守るよ。この先ずっと。
だから、俺から離れないでね」



なぜか懇願するような表情で言われる。

そんなこと言われなくても、離れるつもりはない。

それだったら、好きだなんて言っていない。

こうやって求めたりもしない。


私は、全ての想いを込めて義哉に抱きついた。

それで、ちゃんと伝わったのだと思う。

少し体を離して顔を上げて、私の唇を奪ったから。

全てを奪うような激しいキスをしながら、義哉は私に跨る。

私も目を閉じて、それを受け入れる。


そのとたん、部屋の扉がバンッと勢いよく開いた。

驚いた私たちは、同時に扉の方を見る。




< 235 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop