願う場所、望む奇跡
そこにはなんと、出張中のはずのお母さんが立っていた。
「お、お母さん……!?」
呼びながらも、自分の今の姿を思い返す。
裸で、私の上には義哉が跨っている。
これでは言い訳の仕様がなかった。
それでもと、義哉を押しのける。
だけど、驚いて青ざめているのは私1人だけ。
義哉は、こうなることを承知の上だったのか、落ち着いてお母さんを見ている。
お母さんに至っては、怒鳴り声の一つも出さずにため息を吐いている。
「やっぱりね……」
お母さんがそう呟いた気がした。
何がやっぱりで、どうしてここにいるのだろうか。
状況が理解出来ていない私は、1人でパニックになり、体が震えている。
それに気づいた義哉が、そっと抱きしめてくれた。
「……とりあえず、2人共服を着て、リビングにおいで」
それだけ言うと、部屋の前から立ち去った。
お母さんにとっては、信じがたい光景を見たはずだ。
なのに、声はいつもと変わらない。
どうしてなんだろう。