願う場所、望む奇跡
*ざわめく可能性
それから数日、義哉を観察していたけど、一切裏表があるようには見えない。
私にも母親にも、つねに笑顔なのだ。
だけど、実際それらしきものを見ているのだから本当のことだろう。
莉亜の言う通り、好意を持つ人間とそれ以外に分かれ、態度も極端に違うんだ。
まだ夏も終わらない熱い日の仕事帰り、陽は落ち切らず明るさを残している中、1人で歩いていた。
車通勤なのだけれど、昨日莉亜の家に泊まったことで今日は歩きだった。
莉亜は一人暮らしで、余分な駐車場はないから。
だけど、こういう時に限って面倒なことに巻き込まれるんだ。
「ねぇ、ちょっと」
急に不機嫌そうな声が聞こえた。
だけど、私には関係ないと思い、歩き続ける。
「ちょっと、待ちなさいよっ」
そう叫ばれて、急に腕を引っ張られた。
勢いよくて体勢が崩れかけたけど、なんとか踏ん張った。
今日、ヒール履いていなくて良かった、なんて思った。