願う場所、望む奇跡



そんなことより、急に何だと思って声の主を見ると、派手だけどどう見ても年下の女の子だった。

彼女は制服、私はスーツを着ているのだから年上だと分かっているのだろう。

それなのにタメ口。

その上、不機嫌そうに睨まれている。

睨みたいのはこっちだ。

急に人を呼び止めておいて、一体何だと言うのだ。



「アンタ、一体なんなの?」



主語もなく、睨みつけたまま言う。

それは、こっちのセリフだ。

その態度、一体何様のつもりだ。

だいたい、他の人と間違えているんじゃないのか。

こんな派手な女、知り合いにはいない。


でも、待って。

この子、いつだかに逢った気がする。

逢っただけで、言葉を交わしたことはないはず。



「ジロジロ見て、何?」



私がじっと見ていることに気付いたらしく、不愉快そうに言ってくる。



「あっ」



彼女の不愉快そうなのをそっちのけで、私は思わず声を出す。

それに対して、彼女は眉を寄せる。




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