願う場所、望む奇跡
「夏希、何を言っているの?あなたの弟の義哉でしょう?」
「えっ!?」
そう言われて今1度、目の前の男を見る。
どこをどう見たって、面影なんてない。
とは言え、小さい時しか知らない。
変わっていても不思議じゃないけど、ここまで変わるものだろうか。
「姉さんですね。お久しぶりです」
私がまじまじと見ていると、義哉はにっこり笑って挨拶をした。
その笑顔に、思わずドキッとしてしまった。
生まれて23年。
こんなイケメンに出逢ったこともなければ、話したこともない。
血の繋がった弟なのに、私はどうしていいか分からなかった。
無事に父親の葬儀も終わり、私と母親は最後まで残って後片付けをした。
とは言え、少人数でしたため片づけることはほとんどない。
気になったのは、親戚と呼ばれる人がいなかったことだ。
うちも親戚なんて逢ったことがないのだけど。
「母さん、すいません。手伝わせてしまって」
「何言っているの。これぐらいは当然だわ」