願う場所、望む奇跡
*恋からは遠すぎる
「夏希先輩、悠弥と逢ったらしいですね」
女の子といざこざがあった次の日、莉亜がそんなことを言って来た。
一緒に住んでいないのに、相変わらず情報が早いな。
姉弟で仲が良いことで。
「逢ったよ。悠弥くんもイケメンだねぇ」
「まぁ、義哉くんには負けますけど、それなりに」
「へぇ、莉亜が弟くんの自慢ですか?珍しいね」
「夏希先輩が言ったから、同意しただけじゃないですかー」
唇を突き出して不満そうに莉亜が言う。
「あ、人懐っこそうな顔していますけど、悠弥も腹黒いですからね」
「え?あ、そうなの?」
「元々そうだったので、義哉くんとも合ったんでしょうね。あの2人、双子か?って思うこともありますし」
「確かに、似ているなぁとは思ったけど」
「違うのは、あの人懐っこそうな顔だけ。アレで、結構みんな騙されています」
あーと思いながら、昨日の出来事を思い出す。
人懐っこそうな顔のわりに、視線は鋭く冷たかった。