願う場所、望む奇跡
「だけど、不思議ですよねー。何で義哉くんは、夏希先輩を姉だって公表しないんだろう」
それは、私だって思った。
悠弥くんに言われても、したくないの一点張り。
理由が分からない。
今更思うけど、私を姉だと認めていないのだろうか。
私と姉弟だと言われることが恥ずかしいのだろうか。
そう思うと、急に泣きたくなった。
勝手な思い込みかもしれない。
だけど、拒否する理由なんてそれ以外に思いつかなかった。
「ちょっと、夏希先輩?何で泣きそうになっているんですか!?」
私の表情の異変に気付いた莉亜は、物凄く慌てている。
何でもないと首を振るものの、説得力はない。
「ただ恥ずかしいだけですよっ。男子高生は姉の存在って、嫌というより恥ずかしいらしいです。悠弥も、姉さんとかって呼ぶのが恥ずかしいから、あたしのこと呼び捨てなんですよ」
そう言えば、ずっと“莉亜”って言っていたっけ?
年頃の男の子って複雑なんだ。
だから、尚更義哉の考えていることなんて分からない。