願う場所、望む奇跡



「だけど、不思議ですよねー。何で義哉くんは、夏希先輩を姉だって公表しないんだろう」



それは、私だって思った。

悠弥くんに言われても、したくないの一点張り。

理由が分からない。

今更思うけど、私を姉だと認めていないのだろうか。

私と姉弟だと言われることが恥ずかしいのだろうか。


そう思うと、急に泣きたくなった。

勝手な思い込みかもしれない。

だけど、拒否する理由なんてそれ以外に思いつかなかった。



「ちょっと、夏希先輩?何で泣きそうになっているんですか!?」



私の表情の異変に気付いた莉亜は、物凄く慌てている。

何でもないと首を振るものの、説得力はない。



「ただ恥ずかしいだけですよっ。男子高生は姉の存在って、嫌というより恥ずかしいらしいです。悠弥も、姉さんとかって呼ぶのが恥ずかしいから、あたしのこと呼び捨てなんですよ」



そう言えば、ずっと“莉亜”って言っていたっけ?

年頃の男の子って複雑なんだ。

だから、尚更義哉の考えていることなんて分からない。




< 42 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop