願う場所、望む奇跡
私たちはまだ、姉弟になったばかりだ。
何を考えているかなんて、見ているだけじゃ分からないんだ。
「ただいまー」
「あ、お帰り」
たまたま玄関近くにいたらしい義哉からすぐに言葉が返ってくる。
いつもと変わらない光景に安心する。
それから、いつも通りダイニングへ行き夕食となった。
「あ、夏希。急で悪いんだけど、明日と明後日、夕食お願いしていい?」
夕食の途中に、急に母親が言い出した。
「夕食?作るの?別にいいけど、どうしたの?」
「急に出張が入って。あまり気が進まないけど、行ってこなくちゃ」
母親は、女手一つで私を育てつつ、仕事もバリバリにこなしていた。
私が中学を卒業するまでは、出張も行かなかった。
けど、高校に入ってからは1人でも大丈夫になったため、よく行くようになった。
最近は父親が亡くなったせいもあるのか、あまり行かなかった。