願う場所、望む奇跡
「出張行くのも久しぶりだね」
「お父さんが亡くなったし、義哉が来たから1年ぐらいは行かないようにしようと思ったんだけど、そうもいかなくて。1度行けば、行かされるようになると思うから頼むわ」
「うん、分かった。気を付けていってらっしゃい」
「母さんって出張あるの?」
私たちの会話を黙って聞いていた義哉が口を挟んだ。
「あるわよー。本社や支店に行くことがあるから」
「バリバリで働いているんだ」
義哉が驚いたように言う。
出張行くなら、帰りも遅くなるかもしれない。
今は、義哉が帰って来る前には帰って来ているはずだから。
「俺も早く働きたいなー」
「そういえば、義哉は進路はどうするの?」
「就職します。早く稼ぎたいから」
「何か目的でもあるの?」
「まぁ……そうですね」
不思議そうに聞く母親に、言葉を濁す。