願う場所、望む奇跡
「でも、姉さんが……」
そう言って、義哉は私を見た。
遠慮がちに聞いているくせに、懇願するような目で見ている。
「夏希、ダメなんて言わないわよね?」
母親も母親で、睨みつけるように私を見る。
まるで、私1人が悪者みたいになっていた。
そもそも、そんなこと言われたところで、拒否権がないのは分かっている。
私の意見なんて、聞き入れてもらえるはずもない。
「別にいいよ」
そう言うしかなかった。
私の返事を聞いたとたん、母親も義哉も喜んでいた。
私は、素直に喜ぶことなんて出来なかった。
まともに話せる自信がなかったんだ。
だけど、もう許可した以上、何も言えなかった
それから1週間後、私はくたくたで仕事から帰ってきた。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
そう言って目の前に立っていたのは、なんと義哉だった。