願う場所、望む奇跡
「ドキドキしている……」
無意識にそう呟いた。
『ドキドキ?何をしているんですか!?
その前に、男いませんよね?夏希先輩、恋したんですか!?』
「恋……?」
莉亜は何を言っているのだろう。
私は、恋なんてしていない。
好きなんて感情はない。
そもそも、誰に恋をしたというのか。
会社から帰ってから一歩も外へ出ていない。
話していたのは、弟である義哉だけ。
不安や安心で心の中がぐちゃぐちゃで、ドキドキしていただけ。
イケメンに攻められたから、ドキドキしていただけなのに。
……でも、それは本当のこと?
『夏希先輩、誰を好きになったんですか?』
興味津々で楽しそうに莉亜は言う。
「だから、好きになんてなっていないって」
『だって、ドキドキしたんでしょう?男に免疫がない訳じゃないのに、どうでもいい人にドキドキなんてしませんよ』
莉亜にそう言われて考え込んでしまう。