願う場所、望む奇跡



確かに、今まで男相手にドキドキしたことはない。

恐怖ではあるけど。

言い寄られても、ドキドキもせず嫌悪感しかなかった。

そういうシチュエーションになったとしても。



「私、恋している?」


『男相手にドキドキしたならそうですよ!
どんな状態か分かりませんが、不安やモヤモヤ、安心感があったら尚更ですね』



莉亜が言ったこと、全てが当てはまる。

私、好きな人が出来たんだ。

嫌われているかも、恥ずかしいのかもと思った不安も、
目を合わせて話すことが出来なかったのも、
今さっきの行動も、
全て好きという想いがあったからなんだ。



……だけど、自覚してどうするの?

相手は、正真正銘血の繋がった弟なのだ。

誰に対しても、堂々と好きな人と言える訳がないんだ。

それが、良き相談相手である莉亜だとしても。


隣にいることさえ許されない。

嫉妬だって、私にはする権利がない。

付き合うことだって、キスだって、それ以上のことだって。

将来で言えば、結婚だって出来ない。

彼に対して、何も望んではいけないのだ。




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