願う場所、望む奇跡
「駐車場での弟とやり取りを見ていたんだ。
今井さんの顔が赤くなっていたし、見たことないような穏やかな笑顔だった」
顔が赤いだろうとは自覚していた。
だけど、いつもと違う笑顔なんて自覚はない。
「見間違いじゃ……」
「違う。まだ少し明るかったし、見間違える訳がない」
そうきっぱり言われて、私は言葉を失う。
もう、どう言い訳していいのか分からない。
知られてはいけないことを知られてしまって、頭の中が真っ白になっている。
何も言い訳が思いつかない。
イヤ、言い訳したところで意味はないのかもしれない。
だって、最初は疑問形だったのに、今では言い切っている。
だったら、今後のことを考えないといけない。
違うと言っても意味ないのなら、口止めが必要だろうか。
ただ、ちょっとやそっとじゃ黙っていてくれないかもしれない。
でも、松本くんはそんな人じゃないと思う。
だけど、何をどう言えばいいのか分からない。
「安心して。これを誰かにバラそうなんてしないから」
松本くんの言葉に、ほっと一安心した。