願う場所、望む奇跡
私は、心を落ち着かせようとコーヒーを頼み、ゆっくり待った。
その間、家には遅くなると連絡を入れた。
その時、ふと思った。
バレてしまった今、義哉と離れた方がいいんじゃないかと。
一緒にいれば、他の人にバレる確率も上がる。
離れるいい機会なのかもしれない。
「お待たせ」
携帯とにらめっこしていた私は、松本くんが来ていることに気づかなかった。
声をかけた松本くんは、座らずにテーブルに手をつき私を見ている。
座らないのかと首を傾げる。
「ここ出るよ」
「え?」
驚く暇もなく、松本くんはスタスタと歩いている。
それを見て、私も急いであとを追った。
どこへ行くのかと思えば、何も言わずに車に乗せられた。
近くで、むしろカフェで話すんだと思っていたのに。
車が動き出してからも一言も話さない。
私も何を話していいか分からず黙っていた。
どこへ向かっているのかも分からない。