願う場所、望む奇跡
「夏希、首のとこどうしたの?」
遅くに家に帰って、特に何も言われずお風呂へ行こうと思ったとこで、義哉に話しかけられる。
それに、少しだけドキッとしてしまった。
「首?」
指をさしながら言うけど、よく意味が分からない。
「ちょっと赤くなっているけど」
「赤くなっている?」
反芻した瞬間、顔が赤くなる。
「あ、何でもないよっ」
それだけ言って、慌ててお風呂に駆け込む。
そして、鏡で確認する。
やっぱり、キスマークと呼ばれるモノだ。
松本くん、しっかりつけていたんだ。
ますます赤くなる私は、湯船につかりながら今日のことを思い出す。
そのたびにまた赤面する。
恥ずかしくてこそばゆい感じ。
こんなことを感じながら、好きになっていくのかな。
そんなことを考えていた私は、義哉がそこで立ちすくみ睨みつけるように前を見据え、こぶしを握り締めていることに気づきもしなかった。