願う場所、望む奇跡
頼りになる悠弥だけど、こればかりは言える訳がない。
曖昧な笑みで返すしかなかった。
言ってしまえば、悠弥にまで重荷を背負わせることになるから。
心配かけているのを分かっていながらも、態度は改められない。
「ねぇ、義哉くん。さっきの問題教えて欲しいんだけど……」
「は?俺が教えてなんの得がある訳?」
「え?うーん……あたしのキスとか?」
可愛く言っているつもりみたいだけど、全然そうは見えない。
俺は、舌打ちをする。
「それって、罰ゲームのつもり?あんたとのキスなんて、反吐が出る」
そう言い放って、教室を出る。
学校では、いつもこんな感じ。
甘ったるい声で近寄って来る女に、口悪く返すか無視するか。
モテる現実は、興味がない。
俺が好きになるのは、この先一生夏希だけだから。
誰に告られようと、心は揺れない。
これから先、誰と出逢おうとそれは変わらない。