願う場所、望む奇跡
「義哉くーん、待ってよー」
甘ったるい声で、また呼ばれる。
俺は、それに振り向きもせず歩く。
「もお、早いよー」
そう言って手を掴もうとした瞬間、俺は素早く避ける。
その女がどうなろうと知ったことではない。
夏希以外の女に触れられたくはない。
「もお、危ないじゃん。そんなに嫌がらなくても」
そんなことでは引かないこの女。
この学校では1番厄介なヤツ。
この女、川島遥は周りの女を蹴散らしてでも俺を手に入れようとするヤツ。
無視されても冷たくされてもめげないヤツ。
この女に、夏希の存在がバレると1番マズイ。
「義哉くん、あたしも教えてよ。さっきの難しすぎるよー」
そろそろ、女に名前で呼ばれるのも嫌になってきたな。
別に、俺がいいって言った訳じゃなくて、勝手に呼んでいるだけ。
呼び捨てじゃないだけいいのかもしれないけど。