願う場所、望む奇跡
夏希には、1度も呼ばれたことはない。
なのに、他人に呼ばれるとか、やっぱりおかしい。
1番呼んで欲しい人には呼ばれないなんて。
「義哉くん?聞いている?」
「ちょっと、川島さんっ」
女の問いかけに尚も無視していると、他のとこから声がした。
「あなた、今井くんにベタベタしすぎなんだけど」
「ふーん、それで?」
「それでって、ちょっとは考えなさいよっ。あなたばかりうろちょろしないでっ」
「別にいーじゃん。みんなライバルなんだし、他のこと考えるなんてありえない」
「今井くんにとって迷惑だって言ってんの。そんなことも分からないの?」
「何言っているの?あたしは、隣にいること許されているの」
「は?」
つい声が出て、他の女と重なった。
勘違いもいいとこだな。
誰が隣にいることに許可を出したのだろうか。
誰も許しはしない。
俺の隣にいていいのは、夏希ただ1人だけ。