願う場所、望む奇跡
*悲しいキス
松本くんと付き合ってから、隠すことなく手を繋いでくるから会社では有名になっていた。
「夏希先輩が好きになったのって、松本さんだったんですか?」
付き合ったのを知った時、莉亜がそんなことを聞いてきた。
「あ、うん。そうだよ……」
本当は違うけど、そう答えるしかなかった。
違うと言ったら、松本くんと付き合った理由を聞かれるだろう。
そうなったら答えられないから。
「ふーん……」
じっと私を見つめたまま、そう呟く。
何か、心の奥を見抜かれそうな眼差しに、私はドキッとしてしまう。
そして、その視線から外れるように、顔をそらす。
こんなことすれば、何かあるってバレてしまうのに。
「まぁ、いいですけど。
自分の気持ちに反することをすると、自分が苦しいだけですよ」
きっぱりそう言った。
今の私には、痛い一言だった。