願う場所、望む奇跡
そう言われても、どうすることも出来ない。
進んでしまったものを止めることは出来ないから。
莉亜もそれを言っただけで、それ以降は何も言わなかった。
むしろ、松本くんとどんな風にデートしているのとか、興味津々で聞いてきた。
「夏希、帰れる?」
「あ、うん。ちょっと待ってて」
付き合ってからというもの、毎日のように迎えに来て一緒に帰った。
だから、すぐに周りにバレたのだけど。
そして、呼び方も変わった。
私は未だに松本くんと言っているけど、松本くんは夏希と呼ぶようになった。
それが、少し恥ずかしくもあり、嬉しくもあるような不思議な感覚だった。
「ねぇ、今度の土曜は映画観に行かない?」
「いいけど、今何かやっていたっけ?」
週末になると、デートに出かけていた。
それによって莉亜が、“遊んでくれなくなったー”って言っていたけど。
正直、助かっている。
家にいなくてすむことに。