地味子と学園王子の初恋
「そうそう!あそこ惜しかったよな!」
「あそこで縦スラ決めてたらすげーわ!」
「160近く出てるアウトローを片腕で仕留めた、あのバッターもすげーわな」
俺たちの趣味は共通している。
それは、野球だ。
甲子園は必ず観に行っている。
「今年も楽しみだなー!甲子園!」
「だな、あっこのエースも期待できる」
先の話をしていると、
下駄箱には見覚えのあるやつがいた。
「あ、お前」
「お久しぶりです、この前はすみませんでした。怪我はありませんでしたか?」
下駄箱にいたのは、あの地味子ちゃん。
「俺、そんなヤワじゃないから」
と、笑って話しかける。
「なにかスポーツはやってたりするの?」
何気ない質問だったけど、真剣に答えた。
「小学校はずっと空手と野球やってたよ。中学んときは、少しバスケやってたかな。あ、でも空手は保育園からかも」
「空手…」
その二文字を口にして、下を向くその子。
「ああ。つか、名前なんて言うの?」
「平野愛生です」
「愛生…」
愛生、お前・・・今何やってんの?
俺のこと、まだ覚えてる?
「俺、井川神真。よろしくね、平野」
「あ、はい!」
天使のような笑顔で、俺に笑いかけた。
その笑顔は、どことなく愛生に似ていた。