幽霊なキミ。
部屋に、暗さと静寂が戻る。
「……。」
「……。」
「なんか……すごかったね。」
先に口を開いたのは、直人だった。
そしてこちらを向いた。
「落ち武者……成仏したのか?」
「多分……」
直人が笑顔になるのが見えた。
そして、次の瞬間、私は直人の腕の中にいた。
「ちょっと……!」
暖かい胸元に、甘い、痺れるような感覚でいっぱいになる。
「良かった。」
直人は心の底から言っているようだった。
「……ありがとう。」
私は直人の背中に手を回して、抱きしめ返した。
抱きしめられるって、なんて幸せなんだろう。
私は涙ぐんだその目を、勝手に直人の胸元で拭いた。