キラル -たとえ今日が世界の終わりだったとしても-
[アール・・・?]

[そうだよ]

キーボードを打つ手が振るえて、
やっと入力できた文字にすぐ言葉が返ってきた。

[ねぇ、ゲームをしようよ。新しいゲーム]

私の応えを待つことなく、
スクリーンの中心に手の形が表示された。

-ゲームに参加するには、
 あなたの手の平をスクリーン合わせてくださいー

[アール、本当に綾子なの? ゲームって何?]

チャットの文字を打ち込み、返事を待つ。

1分、2分、3分・・・・

綾子からの返事は無い。

スクリーンには手の形が表示されたままで、
まるで私を誘っているようだった。

チャットをしながらネットゲームをする・・・。
それも綾子と毎晩のようにやっていた遊びだった。

お互いにネットで面白いゲームを見つけて
2人で楽しんでいたのだ。

かっての記憶が、恐怖を和らげた。

私は右手をキーボードから離し、
スクリーンに近づけた。
そして伸ばした手の平を画面の手に合わせた。

最初は微かに感じていた振動が
だんだんとはっきりとした音へ変わっていった。

!!!手を離せ!!!

頭の片隅で危険信号が鳴り響いていた。

けれど時既に遅く、目の前にあるスクリーンに付けた私の手は、
引き戻そうにも、まるでPCに意思があるように吸い付き
引き戻すことができない。

胃がチクチクと痛み出し、生唾が出てくる。

スクリーンから手を振りほどこうと立ち上がり、
弾みを付けるために大きく後に下がった瞬間、
スクリーンに映し出されていた手は
今や立体的な形となって伸び、
私の手はしっかりと握られ、
そのままスクリーンの中へ引っ張り込まれてしまったのだ。

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